丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より六月二十三日「私は跳躍だ」を読む
うたかた湖の、まほろ町の主でもある巨鯉が披露した「跳躍」が語る。
丸山作品の主人公たちは、一見救いがないような弱者なのに、丸山先生が語るその姿には希望が、未来があふれている。
そんな文に読者は救われ、己の有り様を考え直すのかもしれない。
私を目撃したのは
少年世一と盲目の少女ふたり
それに
四六時中少女の面倒を見てやっている白い犬だけで、
雨やみのあいだに遊びにきたかれらは
沖へ向かって
未来へ向かって
突き出ているぼろぼろの桟橋を
慎重な足取りで渡り、
その突端に
肩を並べて佇んだ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』122ページ)