丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より七月七日「私は幻聴だ」を読む
職にありついても、頑なに一汁一菜の生活を送る修行僧。
そんな彼に襲いかかる幻聴の書き方が、いかにも幻聴らしいなあと思いつつ読む。
ここで出てくる世一にも、不思議な妖精めいた存在感がある。
少しく冷静になって考えてみれば
この世が地獄そのものであることくらい簡単に察しがつくだろうにと
そう言ってやった。
しかし
実際に言ったのは
この私ではなく、
私が言おうとする前に
私ではない誰かに先を越されてしまい、
とはいうものの
彼の周辺には
つむじのない頭に青い帽子を載せた少年が
なんとも危なっかしい足取りで
行ったり来たりしているばかりだった。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』180ページ)
このあと、響いてきたのは女の声で、しかも真逆の内容だった……という結末が、なんとも幻聴らしい雰囲気を出している。

(もみじを描いた。だが葉脈を描こうとしたら滲むし、陰影がうまく出ない。赤ちゃんの葉っぱのようなモミジの筈が、ヤツデみたいにドサッとした葉になってしまった。)