さりはま書房徒然日誌2025年10月27日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より七月十一日「私は農薬だ」を読む

刑務所から出所した後、錦鯉を育てて静かに暮らす世一の伯父。

リゾート開発のための立ち退き交渉にも応じないで、静かに暮らそうとする。

だが相手は極道者たちを使って、錦鯉の池に農薬を放り込む。

たちまち死んでゆく錦鯉。

世一の伯父は背後に蠢く輩を察して、怒りにかられる。

以下引用文。その心情の変化が色に託され、見えない感情が見えてくる気がしてくる。

すると
   彼の胸に
      川面を埋めて流れる紅葉やら
         陣頭に立って殴り込みを掛けてきた相手を
            一刀のもとに斬って捨てた
               若き日の重大な過ちやらがいっぺんに甦り、

無色へと戻りつつあった心が
   みるみる朱に染まり、


かつてきっぱりと否定した
   殺られたら殺り返すという
      単純明快な力学が頭をもたげた。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』197ページ)




(逆風と戦う笹のつもりが、逆風にみんなで回れ右しているような笹になってしまった。でも絵は風の優しさ、厳しさを表現しようとする、のが面白い)

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