さりはま書房徒然日誌2025年10月29日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より七月十六日「私は憂いだ」を読む

世一の姉とハワイへ新婚旅行に出かけたストーヴ作りの男。
帰ってきてから胸のうちに広がる憂い。

そんな憂いが語るハワイの様子は新しい切り口で語られながら、やはりハワイが見えてくるところが面白い。

気が付かないだけで、私も同じような疎ましさを感じていたのかもしれない。

成り金の集まりにすぎぬ
   見せかけの経済大国からどっと押し寄せる観光客の重さで
      今にも沈んでしまいそうな火山島は
         ただ暑くて
            ひたすら落ち着きがなく、
               金銭を挟んでの関係があからさま過ぎて
                  帰る間際まで馴染めなかった。

夜になっても放熱を止めぬ海の色は
   うたかた湖の青ではなく
      オオルリの青でもなく、


( 丸山健二『千日の瑠璃 終結7』215ページ)

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