丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より七月十六日「私は憂いだ」を読む
世一の姉とハワイへ新婚旅行に出かけたストーヴ作りの男。
帰ってきてから胸のうちに広がる憂い。
そんな憂いが語るハワイの様子は新しい切り口で語られながら、やはりハワイが見えてくるところが面白い。
気が付かないだけで、私も同じような疎ましさを感じていたのかもしれない。
成り金の集まりにすぎぬ
見せかけの経済大国からどっと押し寄せる観光客の重さで
今にも沈んでしまいそうな火山島は
ただ暑くて
ひたすら落ち着きがなく、
金銭を挟んでの関係があからさま過ぎて
帰る間際まで馴染めなかった。
夜になっても放熱を止めぬ海の色は
うたかた湖の青ではなく
オオルリの青でもなく、
( 丸山健二『千日の瑠璃 終結7』215ページ)