さりはま書房徒然日誌2025年11月5日(水)

花布(はなぎれ)編みにトライ

11月3日、中板橋の手製本工房まるみず組で「花布編み」のテクニカルレッスンが開催された。

飛び抜けて不器用かつ呑み込みの悪い私には、難易度が高いのは目に見えている……。

どうしようかと思案。参加の形は工房での直接参加、リモートでの参加、後日動画を見ながらの参加が選択できる。

色々迷いつつ、工房で参加する形にした。工房での参加でもテキストのプリントはあるし、動画も配信してくれる。

花布は、本文と背の間にのっているもの。
今では本文と背の境目隠しとして、飾り的なものである。作り方も紐に製本クロスをまいたものが多い。

でも今回学んだのは、ヨーロッパの伝統的な工芸製本パッセカルトンで使われる花布スタイル。
花布を編みながら、本文に縫い付けていくもの。
その中でも一番簡単な編み方で、パッセだけでなく、普通の上製本でも使うことが出来る編み方だそう。

まず並んでいる絹糸全色と色鉛筆(40色以上あったのでは?)から楽しく選択。
テキストの絵に色鉛筆で塗りこみイメージしやすくする。

でも絹糸もだんだん色の種類が少なくなってきているとのこと。寂しい話である。

市販の糸綴じの手帳の表紙を剥がして本文だけにする。

軸となる丸い革紐に絹糸を二色で、先生の解説を聞きながら編み込みスタート。
最初は出来ていた……

だんだん軸紐が勝手に動くし、糸はスムーズに寄ってくれないしモタモタ。

先生が心配して声をかけてくださる。
オンライン参加者もいて大変なのに申し訳ない。
先生がもう一度やり直して下さる。しかも見やすいように特大ライト付き拡大鏡で拡大してくださる作業手順を側で見る。
「わかった」と思って席に戻る2歩の間に、また分からなくなっている……。


他の参加者は花布を天地両方縫い付けて見返し、表紙貼りまできているのに、私の手元には正体不明のものとなってしまった花布が。

そんな私を怒ることなく、先生は私の失敗作をほどいて(ほどくのも大変なのに)もう一度優しく説明してくださる。

私の失敗をほどいて、先生が途中からやり直してくださって片方だけ完成。(↓)
端の方にまだ私の名残りのボコボコがあるけど……

先生が親切にも早速動画を送って下さるとのことなので、残りは家で動画とプリントを見ながらゆっくりやることにして、工房から帰る。

でも家でトライするも、糸がうまく動いてくれないし、謎の動きをしてしまい、ほどいてはやり直し。
絹糸って丈夫だ……と思ったけど、流石にプッチンと切れた。
近くのユザワヤで絹糸を購入(私は裁縫をしないので、絹糸が家になかった)。

すったもんだの挙句、ようやくシマシマらしき物がうっすら見える花布が完成?(↓)

でもシマシマは歪だし、なんか下の部分が先生みたいにシマシマになっていない。

もう一度ほどいてやり直そう。

こうして編んだ花布は綺麗な飾りになるだけでなく、本文に縫いつけるから本が頑丈になる気がする。

最初から動画を見て家でやれば……と思われるかもしれない。
でも工房に行くと、先生の知識や教えはもちろん、色んな形で本に関わっている方の本のお話を伺うことも出来る。

例えば……
パッセに使おうと思っている丸山健二全集9巻『月に泣く』をレッスンのついでに持参、糸かがりか先生に確認してもらう。
無事、糸かがりだった!


糸かがりのように見えて、そうでないアジロ綴じの本がとても多い。
この全集も一巻の1が糸かがり、その後アジロ綴じが続いて、9巻だけまた糸かがりになっている。
倒産して今はない版元だが、思い入れの深い一冊だったのかもしれない。

糸かがりにすれば製本代金はすごく跳ね上がる……と先生から伺い、版元の思いと苦しさを想像する。

全集9巻の本をご覧になって、先生が「すごく素敵な装丁ですね」と言ってくださる。

同じレッスンを受けていた書籍デザイナーの方も手にとって装丁に感心してくださる。
そして奥付きをご覧になって、「とても有名な装丁家」と教えてくださる。

さらにこの表紙の装丁に使われている紙はNTラシャ。

色味が多く、百色以上あるので全百巻を予定していた全集それぞれに色の異なるNTラシャを使う予定だったのでは……
NTラシャだとすっとした印象になるから使ったのでは……
と教えてくださる。


そして刊行時「高い」との声が聞こえた全集の価格も、「この値段では採算ギリギリ、ギリギリにするにも厳しい値段だったのでは」とも教えて頂いた。
すごく苦しかったのだな……と今はなき版元の苦労と思いを知る。

本に関わる様々な方からお話を伺って、視野を広げていくことが出来るのは工房参加ならでは……の楽しさだと思う。

なので不器用をかえりみず工房の講座には参加するつもり。
ものすごく器用な人が多いまるみず組で、モタモタと謎の動きをしつつも学んでいこう。


パッセカルトンは「月に泣く」を同時に三冊手がけるつもりだけど。
有名な装丁家さんが手がけた素敵な装丁の本だ。私の手で劣化させてしまわないように……

そのためにもパッセでは避けて通れない花布編み、せっせと練習しよう。

それにしても百色の全集……見てみたかったな。(↓全集刊行本の写真、パンフより)

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