丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より七月二十三日「私は映画だ」を読む
映画を観るのが大好きな丸山先生らしい文だなあと思う。
以下引用文。
映画を映画館で観るとき、まったく知らない者同士が並ぶ不思議さ、束の間の連帯感で結ばれる不思議さが書かれている。
でもネットで映画を観るようになって、こういう連帯感も失われつつある、と寂しくなる。
そんなかれらは
それなりに私にのめりこみながら
各人に互いの存在を意識し合っており、
思わず苦笑が一致した際には
ほとんど絆に近いものすら錯覚し、
そして
ある種の連帯感すら抱くのだ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』244ページ)
以下引用文。
映画を観た後、現実へと戻されていくつまらない感じが思い出されてくる。
三本目をまだ観ていない者はトイレへ寄り
全作品を観終えた者はそそくさと出て
虚構ではない
面白くもなんともない現実の奥へと
あっさりと呑みこまれてしまう。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』245ページ)