丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より七月二十六日「私はあくびだ」を読む
「交通取り締まりの警官たちが連発する 半ば自嘲気味の」あくびが語る。
あくびは警官だけでなく、通りがかったヤクザ者にも、そして丸山先生を思わせる作家にも取り付く。
丸山作品に出てくる様々な、どこか弱い所のある人々の中に、明らかに丸山先生らしき人物が描かれていることがよくある気がする。
作者らしき人物が出現すると、虚構の世界が一気にリアリティを帯びてくる。
日に三時間ほどしか執筆せず
あとはぶらぶらして過ごす男が
ハンドルに装着した籠に熊の仔にそっくりなむく犬を載せて
おんぼろのスクーターを駆って通る。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』256ページ)
そして以下引用文、丸山先生らしき作家が呟く言葉。
こんなふうに半ば呆れ、半ば愛情を込めてこの世を眺めているのか……と、丸山先生の視点から眺める気分になる。
小説家は
「ああ、人間って奴はもうまったく」と呟き、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』257ページ)

↑ 茄子を描いたつもりだったが、複数の友人から「ゴキブリかと思った」と言われた。