丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より八月三日「私は集中豪雨だ」を読む
以下引用文。
まるで集中豪雨が意思を、自然破壊をする人間への怒りをもって行動しているように感じる。
最後の「マツムシソウの群生地」という箇所が切々と自然破壊の惨たらしさを語りかけてくる。
私が例年になく粗暴な振舞いに及んだのは
湖に面した西側の山々がまる裸にされたからで、
樹木を失った山をひと想いに押し流してやろうと
大量の土砂を湖へ運び入れ、
ために
魚の鰓や水草の気孔を塞いでしまい、
深夜になって崩した小さな山が大きな土石流となって
造成中の別荘地へどっと襲いかかり、
家がまだ一軒も建てられていない雑木林の一角と
マツムシソウの群生地である草原の一部を
完璧なまでに叩きのめした。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』 287ページ)