丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より八月十一日「私は容態だ」を読む
錦鯉を毒殺された怒りのあまり寝込んだ世一の叔父。
世一を連れて兄が見舞いにくる。
世一をここに残して欲しいと願う叔父の言葉に、何もできない筈なのに癒しを与えてくれる世一の不思議な力を思う。
世一にそんな力を考えた視点に、弱い者を描きつつその力を信じる丸山文学の魅力を思う。
手土産の羊羹を置いて帰ろうとする兄に
甥を残していってくれないかと頼み、
「こんな鬱陶しい奴がいたんじゃ下がる熱も下がらんぞ」
「むしろ気が休まるんだ」という
そんなやり取りの後、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』319ページ)
本当に至福の時に思える。
甥は私に寄り添うようにして寝そべり
心が通じ合った者同士に成立する沈黙の心地よさに浸っていると
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』319ページ)