丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より八月二十四日「私は落涙だ」を読む
少年世一にオオルリのさえずりをきかせてもらっている盲目の少女が流す涙が語る。
盲目の少女に見えてくる世界の広がりに、つまらない欲が消え、心が静かになる文。
ために
少女を愛犬と共に
夏空の向こうに横たわる
広大無辺の宇宙へといざない、
輪番制で
もしくは順繰りに生滅する
星々を見せてやり、
無いものを嘆く気持ちを
あっさりと吹き飛ばした。
その代わりとして
有るものに集中して生きる力を授け、
張り切り過ぎたオオルリは一滴鮮血を吐いたものの
黙ってしまうことはなかった。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』371ページ)