しかしながら一人の友でも,仲間は心に静けさと平穏をいくらかでも戻してくれるので、精神がここまで妨げられることは余りない。心中がいくぶん静まり、相手の立場に身をおく時がくる。状況をてらす明かりのなかで思いだすとき、私たちも同じ光のなかで自分の状況をみるようになる。共感の効果がただちにきいてくるためである。友の共感にくらべ、知り合いにはあまり期待しない。知り合いには、こうした状況を打ち明けることができないが、友人には打ち明けることができる。だからこそ知り合いの前では平静さをよそおい、相手が厭わないで考えてくれそうな一般的な状況にまで、自分の考えをあわせようとする。他人の集まりには、共感をもとめない。だから他人の前では、一段と静かになり、相手のレベルにまで情熱をダウンしようとする。そのなかに私たちがいる仲間は、こうしても異存がないように思われているのかもしれない。あるいは偽りの姿でしかないのかもしれない。もし私たちが自分自身の主であるなら、知り合いにすぎなくても、その存在は心を静めてくれるからだ。むしろ友達よりも心を静めてくれる。他人の集まりのほうが、知り合いの集まりよりも心を静めてくれるものになるだろう。(さりはま訳)
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