マーシャル 経済学原理 八版への序文(18から22ページ)

 しかし、トラスト(企業合同)が巨大市場を征服しようと試みるとき、普通の行動が背景にある。株で成り立つ社会が形成されるときでも、形成されないときでもだ。とりわけ特別な体制の政策で支配されようとするときであり、仕事で成功することに誠実なのではなく、巨大な証券取引所の作戦行動や市場を制御しようとする運動に従属するときである。こうしたことがらについて、「基礎」についての巻では、適切には説明できない。だから上部構造のいくつかを取り扱う巻で述べている。(18ページ)

  経済学者のメッカは、経済の歴史よりも、経済の生活現象にある。しかし生活現象についての概念は、機械についてよりも複雑なものである。だから「基礎」についての巻は、機械の類似性について比較的大きく取り上げている。しばしば使用されるのは「平衡」という単語だが、この単語は変化のない類似性からなるものを示している。優れた注意と一体となる事実は、現代における人生のありふれた状況にむけられ、その中心となる考えは「動的」というよりも変化しない考えを示している。しかし実際に動きを生じるのは力に関したことであり、その基調となるのは安定より、動的なのである。(19ページ)

  しかしながら扱う力がたくさんありすぎるため、一度に扱うのは二、三にして、主な研究への補助として、部分的な解決策をたくさん試みるのがよい。特別な商品に関しては、需要と供給と値段の主要な関係をこのように切り離すことによって始まる。「他のものと等しいから」という言葉によって、すべての力を不活発な状態まで弱める。こうした力が不活発だとは思わないが、しばらくのあいだ、その活動を無視する。こうした科学的な考え方は、科学より古いものである。意識的にせよ、無意識的にせよ、遠い昔から、鋭敏な人間が、ふだんの生活の難しい問題を扱ってきた方法なのである。(20ページ)

  第二段階では、強制されていた仮の睡眠状態から、さらなる力が解き放たれる。特定の商品グループにおける商品の需要と供給の状況変化がはじまる。そして複雑な相互交流が観察されるようになる。徐々に動的な問題の分野が広がる。暫定的な、変化のない仮定の分野は小さくなり、ついに大勢の異なる製造業者のあいだで、国の配当金を配分するという中心的な問題へ到達する。同時に「代理人」の動的な原則が作用し、製造業者の需要と供給を引き起こす。製造業者は、他の業者との関連のなかで、需要と供給の動きに間接的な影響をうける。たとえ産業から遠く離れた場所においてでもある。(21ページ)

  経済の主要な関心とは、このように善と悪のために、変化と進歩にかりたてられた人間と共にある。断片的な、変化しない仮定が用いられるのは、動的な、あるいはやや生物学的な概念への、一時的な補助としてである。しかし経済の中心になる考えは、その基礎の部分だけが話し合われているときでさえも、生き生きとした力と動きがある考えにちがいない。( 22ページ ) (さりはま訳)

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