アルフレッド・マーシャル 経済学原理 1.1.3

収入の合計金額が人格におよぼす影響は、たいていの場合、多少なりとも、その収入を得る手段がおよぼす影響に等しい。年収が1000ポンドだろうと5000ポンドだろうと、家庭生活の満足感には何の違いも生じないかもしれない。しかし収入が30ポンドか150ポンドかということは、大きな違いを生じる。それというのも150ポンドの暮らしの家族には、完全な生活をするための物的条件があるけれど、30ポンドの暮らしの家族にはないからだ。宗教においても、家族の愛情においても、友情においても、こうした能力の多くにおいて、貧しい人々でさえ、最高に幸せな状態をうみだす能力を発揮する場を見つけるのかもしれない。しかし極貧にかこまれた状況では、とりわけ混みあった場所においては、幸せを生み出す高い能力があろうとも、その能力は弱まるのかもしれない。大都市で最下層とされる人たちには、友情の機会というものがない。そうした最下層の人々は人並みの生活をするのに必要なものも知らなければ、くつろぎも知らない。家族がまとまる生活も少しも知らない。そして宗教も、最下層の人の心をひきよせることにしばしば失敗する。あきらかにこうした人々が肉体的にも、精神的にも、道徳面でも不健全な状況にあるのは、貧困以外のところに理由があるせいでもある。だが、貧困が主な理由なのである。(1.1.3)

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