経済学原理1巻1章 導入 1.1.1

 政治経済あるいは経済学とは、仕事をするという普通の生活において、人間についてとらえる研究である。政治経済あるいは経済学とは、幸福を達成したり、幸福になるのに必要な物を使用することに、密接に関係がある個人や社会的行動について、検証するものである。(1.1.1)

 よって政治経済あるいは経済学とは、富についての研究でもある。いっぽうで更に大事なことは、人間についての研究の一分野でもあるということである。なぜなら人の性格とは、毎日の仕事で形づくられるものだからである。それゆえ私たちが手にする物質からできた資源のほうが、他からの影響よりも大きいのである。ただし宗教的な理想の場合は別である。世界の歴史を形づくる二大勢力とは、宗教であり、経済学なのである。あらゆる地において、しばらく主流をなしてきたのは、陸軍の情熱と芸術的な精神だった。しかし宗教と経済の影響というものが、重要なグループから移されることはなかった。そして他のすべてより、常に重要であり続けた。宗教的な動機のほうが、経済的な動機より激しいものではある。でも宗教的な動機からの、既成の権威や権力に対抗しようとする実力行使が、生活にまでひろがることはあまりなかった。それというのも、仕事によって生計をたてるのだが、精神活動が最高の状態になる時間に、仕事は思考を満足させてくれるからである。そうした時間に特徴を形づくるのは、仕事で能力を用いるときの方法でもあり、仕事から思いつく思考や感情であり、雇用主や従業員という仕事仲間との関係なのである。(1.1.2)

 

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