アダム・スミス 道徳感情論1.1.42 うっとうしい悲しみもあれば敬意をはらいたくなる悲しみもある

一方で、なんとも気高いまでの礼儀正しさと上品さを感じる行動がある。自身に関係したことであるにもかかわらず、行動に平静さと自制心を保っているおかげで、あらゆる情熱が威厳にみち、私たちがついていける程度にまで情熱をトーンダウンさせる人の行動である。でも、やかましいまでの悲しみにはうんざりだ。デリカシーというものに欠けているし、私たちに悲しむように迫ってきて、ため息やら涙やら、わずらわしい嘆きを要求してくる。畏敬の念をいだくのは、控えめで、静かで、威厳のある悲しみなのである。そうした悲しみを発見するのは、腫れぼったい目であったり、唇や頬のわななきであったり、冷ややかだけれど、冷静で、感動させる行動なのである。そうした悲しみは、私たちにも同じような悲しみを求めてくる。私たちは悲しみにうやうやしい注意をむけ、心配のあまり行動全般に関心をよせる。不適切な言動により静けさが妨げられないようにするが、その静けさとは労苦の賜でああり、多大な努力を要して支えるものなのである。

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