経済学で扱う重要な論争とは、人々が満足すべき生活状態にあるようにするためのものである。もし重要な論争であれば、あらゆる年齢の、優れた能力の持ち主である多くの思索家の注意をあつめてもよかった。さらにそうであれば、今や完成をめざして前進していてもよいはずだ。しかし事実は、なすべき仕事の難しさと関連して、経済学者の数は常に少ない。だから経済学はまだ揺籃期にある。この理由のひとつとして、満足すべき生活状態に関する経済学の収穫ということが、見過ごされてきたということにある。たしかに、経済学というものは研究対象が富だということもあり、多くの学生が一目で嫌ってきた。学生というものは知識の限界点を押し進めるために努力するものであり、自分の富についてはほとんど関心がないからだ。(1.1.10)