アダム・スミス 道徳感情論 1.Ⅱ.8 肉体への影響よりも想像力への影響の方が大きい

肉体に由来する情熱とは、想像力に由来する情熱とまったく異なるものである。私の体の骨格が、仲間の体の骨格に生じる変化に影響されることはほとんどない。しかし私の想像力を更にのばすことは可能である。また、こう表現することが許されるなら、自分が慣れ親しんだものの外形や形について推測することも、更に簡単なことである。このため愛における絶望も、野望における失意も、肉体上のひどい災いが生み出す共感よりも、更なる共感をよびおこすものである。こうした情熱とは、完全に想像力から生じるものである。すべての財産を失った人でも、もし健康であれば、その体のうちに何も苦しみは感じはしない。その人が苦しむものは想像力のみであり、想像力がその人に描くものとは威厳を喪失した姿であり、友達から無視された姿であり、友からの侮蔑であり、他人にすがっている様であり、欠乏や悲惨さに苦しむ姿であり、じきにわが身にふりかかってくるものである。こういうわけで、私たちはその人に強く共感するのである。なぜなら自分の体を駆使して相手の体を形成するよりも、自分の想像力を駆使して相手の想像力を形成する方がたやすいからである。(1..8)              

さりはま の紹介

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: 道徳感情論セクション2 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.