経済学について研究するとき、こうした事実について協力していかなければいけない。現代の問題をあつかう際、一番役にたつものとは、現代における事実である。はるか昔の経済の記録とは、ある意味つまらなくもあり、信用できないものである。過去の経済状況は現在とはまったく異なるものであり、自由企業、一般教育、真の民主主義、蒸気エネルギー、安価な印刷と電報というて点で異なるものである。(1.Ⅳ.4)
経済学は、知識を獲得することを第一の目的にして、現実的な事柄に光をあてることを第二の目的にしてきた。だが、研究にとりかかる前にしなければいけないこととは、なにが経済学の役に立つのか注意深く考えることである。それでも役にたつということを重視して、研究を計画するべきではない。目指す目的への経済学からの直接的な影響がなくなると、すぐに役に立つことばかり考えるようになり、思考の軌跡を解消したいという誘惑にかられるからである。実用的な目標をそのまま追求することは、あらゆる種類の知識の断片をまとめるようなものである。その知識とは、すぐに効く効果はあるにしても、相互につながりがなく、ほとんど光をなげかけないものである。私たちの精神的なエネルギーは相互に行ったりきたりするのに費やされるだけであり、なにも徹底的に考え抜かれることはなく、真の進歩は達成されない。(1.Ⅳ.5)