アルフレッド・マーシャル 経済学原理 1.Ⅳ.22

人間について語る科学では、正確さを達成することは難しい。正確さにそむかない道とは、唯一、見通しのよい道をとることである。見通しのよい道が、いつも誘いかけてくる。たとえ誠実さにかけた道だとしても、意志の固い仕事をすることで正確さへの道をたどるとき、なるだけ正確さにそむかない道をたどりたいという誘惑に強くかられる。歴史について正確に研究しようとする者がうまくいかないのは、研究しようとする能力がないせいであり、相関的な関係について評価できる観察基準がないせいである。こうした評価は、論争をしていくなかで、あらゆる場面にひそんでいる。歴史学者は、相関的な関係について絶対的な評価をしないのだから、何らかの理由が他のことが原因でくつげされたと結論づけることはできない。結論をだそうとするには、相関的な関係について、絶対的な評価をしていなければいけない。歴史学者に、どれほど主観的な印象に基づいているのか気づいてもらうには、ただ努力してもらうしかない。経済学者も、こうした困難に邪魔されるものの、人間の行動について研究している他の研究者ほどではない。自然科学者の仕事に正確さと客観性をあたえるという美徳に関して、経済学者も同じように貢献している。とにかく経済学者は、現在の、あるいは最近の出来事に関して、唱えることができる説のうち、どの説が明確であり、最大限に正確な数なのかについて、観察した事柄をまとめている。更に経済学者が有利なのは、表面下にあって簡単には見ることが出来ない理由や原因を探し求め、複雑な状況を分析し、再構築するという点にあるのである。

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