サキ「耐えがたきバシントン」 Ⅳ章 38回

妻に莫大な富があり、その富に比例して人柄にも、野心にも生まれつきの資質というものが備わっていれば、おそらくコーマスに元々備わる、隠されたエネルギーを楽しいものにかえてくれるだろうが、そのエネルギーとは出世に結びつかず、少なくとも仕事にはならないものであり、おまけに向かいの真面目な顔の娘は特徴もなく、活気にも欠けているようにみえた。フランチェスカは個人的なことにお思いをめぐらした。想像力がもてあそぶ申し出は満ちたりたものであり、今の手頃な取り決めが終わりとなって、フランチェスカとヴァン・デール・ムーレンが新しい場所を探さなければいけないようなときには、信じられないような金額が、ブルーストリートの家についての虚言に捧げられ、あの家を手に入れることになるかもしれない。

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