ヨールは、それに応じるように、小さく笑い声をあげた。それは遠回しながら、コーマスをけなすための絶好の機会であった。エレーヌはその批判を聞き漏らすまいとしながら座り、批判されている者を今すぐ判断することは保留した。
「彼の自己本位なことときたら、まったく徹底しているけど、なんの役にもたたない」ヨールは言った。「それにひきかえ、僕の自己本位なところはありふれているけれど、いつも徹底して実用的なものだし、計算されたものだ。彼は白鳥に贈り物を受け取らせるのにずいぶん苦労するだろうし、おまけにパンとバターがない状態にして、僕たちの憎しみを買うことになるだろう。さらに彼はすごく熱くなるだろう。」
エレーヌはふたたび当惑してしまった。ヨールが今までに冷たいことを言ったことがあったとしても、それは自分についてのことだった。
「もし、いとこのシュゼットがここにいれば」彼女は意地の悪い微笑みを口元にうかべていった。「バターつきのパンをなくしたことに涙にくれたことでしょうし、それに後々まで彼女の心に現れるコーマスの姿は、おぞましくて、滅茶苦茶なことをやっている、憎むべき者でしょうね。本当のところ私にも、この損失にたいして、なぜ抗議しないのかわからないわ」
「理由は二つある」ヨールはいった。「君はかなりコーマスが好きだ。それに僕はバターつきパンがあまり好きではない」