サキ「耐えがたきバシントン」 Ⅸ章93回

健全な真実を語る説教師にしては、彼女の声には信念が欠けていた。

「もし私とアーネスト・クロプシュトックが神のもとで本当に等しいとすれば」ヨールは慇懃無礼にいった。「神には、眼科医を受診するようにすすめた方がいいでしょう」 クロプシュトックの若者はぬかるんだ土をはね散らかして、つぶれかけた革製の鞍を馬にのせたまま、柵までドタドタ走ってくると、大きな声で、陽気に挨拶をしてきた。ジョワイユーズは優美とはいえない栗毛色をした、とうもろこしのような耳を後ろにたおし、その傍らには、馬に似つかわしい乗り手だと言うべきなのだろうか、ヨールが立っていた。馬がくだした判断が認められ、承認されているのは、ヨールの冷ややかな視線を見れば明らかであった。

「とても素晴らしい時を過ごして楽しんできました」新参者は騒々しいまでの熱心さで語った。「先月、パリにいたのですが、そこでは苺をたくさん食べましてね。それからロンドンにきて、もっと苺を食べたのですが。さらにハーフォードシャーでも、季節はずれの苺をたくさん食べてきました。今年はたくさん苺を食べてきましたよ」それから笑い声をあげたが、それは運命を受けるに値するとでもいう者のようであった。

「そういう魅力的な話でしたら」ヨールはいった。「どこの家の応接間でも語るにふさわしいですな」 それからレディ・ヴーラから、つばの広い帽子で曲線を描くようにして向きを変え、じりじりしているジョワイユーズを馬と乗馬をする人の流れに戻した。

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