アーサー・モリスン倫敦貧民窟物語「ジェイゴウの子ども」5章36回

ジェイゴウ・コートとエッジ・レーンのなかほどにあるオールド・ジェイゴウ・ストリートには、「フィーザーズ」が建っていた。それはジェイゴウにある四軒のパブのうちでも、もっとも汚れ、不快なパブだった。そのフィーザーズに、ラーリィたちが大勢追いこまれ、カウンターの奥と酒場をランスたちからしばらく守ることになった。ランスたちが束になって追いかけてきると、椅子や瓶、錫のつぼなどが勢いよく飛んできた。そのかたわらでギャップの女将はカウンターのビールポンプに半狂乱になってぶらさがりながら、哀願したり、泣き言をいったりしていた。そのとき仕切り壁がガシャンと音をたてながら崩れ、それとともに棚やら瓶がたくさん落下してきた。それに乗じてランスたちが廃墟さながらのパブに突進すると、ラーリィたちを殴りたおしてつかみかかり、窓から裏庭へと放りだした。このようにして邪魔な敵がひそむ家を片づけたランスたちは、お礼に酒を要求してきて、それを飲んだ。そのあとビール装置のハンドルを取ってしまい、数本酒瓶をつかんで地下の酒蔵へとむかって、コルク栓をぬいた。ギャップの女将は、パブでのいつもの騒動なら鎮める術を、誰よりもよく知っていた。錫のつぼで殴られた男を相手にしても、大丈夫だった。だが、このとき彼女には、口出しをしないだけの分別はあった。今まで、何事にも気絶をしたことがない彼女だったが、だらりと無気力に座って、すすり泣きながらののしるのであった。

In Old Jago Street, half way between Jago Court and Edge Lane, stood the Feathers, the grimiest and vilest of the four public-houses in the Jago. Into the Feathers some dozen Learys were driven, and for a while they held the inner bar and the tap-room against the Ranns, who swarmed after them, chairs, bottles, and pewter pots flying thick, while Mother Gapp, the landlady, hung hysterical on the beer-pulls in the bar, supplicating and blubbering aloud. Then a partition came down with a crash, bringing shelves and many glasses with it, and the Ranns rushed over the ruin, beating the Learys down, jumping on them, heaving them through the back windows. Having thus cleared the house of the intruding enemy, the Ranns demanded recompense of liquor, and took it, dragging handles off beer-engines, seizing bottles, breaking into the cellar, and driving in bungs. Nobody better than Mother Gapp could quell an ordinary bar riot—even to knocking a man down with a pot; but she knew better than to attempt interference now. Nothing could have made her swoon, but she sat limp and helpless, weeping and blaspheming.

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