アーサー・モリスン倫敦貧民窟物語「ジェイゴウの子ども」15章110回

 そのときデイッキーは猫背の少年のことを思い出し、ダヴ・レーンへ前かがみになりながら行った。だが、ボビィ・ルーパーの姿はどこにもなかった。ジェイゴウとダヴ・レーンは反目しあっている地区で、争いの活気にあふれ、戦いの種がくすぶっていた。ただ短い期間ながら、はっきりとした和解の期間は別であったが、そのあいだも更に猛々しい、次なる攻撃をダヴ・レーンへくわえることに人々の心は捧げられていた。ジェイゴウの人々とは、いつも攻撃者であり、征服者であるからだ。デイッキーが用心深く隠れ場所にひそんでいたのも、そのせいだ。近づきやすいとは言いがたいダヴ・レーンの少年たちに見つかって、連れて行かれないように用心したのだ。どこにルーパーさん一家が住んでいるのかということも、彼は知っていたので、そこに行って戸口をうろうろした。オルゴールの音色が弱まるときのような、乱れた金属音が聞こえてこないかと思ったこともあった。だが、それらしいものは聞こえてこなかった。さしあたり彼が満足を覚えたのは、ルーパーの家の窓に石を放り込んで逃げ出したときだった。

Then Dicky remembered the hunchback, and slouched off to Dove Lane. But he could see nothing of Bobby Roper. The Jago and Dove Lane were districts ever at feud, active or smouldering, save for brief intervals of ostentatious reconciliation, serving to render the next attack on Dove Lane the more savage—for invariably the Jagos were aggressors and victors. Dicky was careful in his lurkings, therefore: lest he should be recognised and set upon by more Dove Lane boys than would be convenient. He knew where the Ropers lived, and he went and hung about the door. Once he fancied he could hear a disjointed tinkle, as of a music-box grown infirm, but he was not sure of it. And in the end he contented himself, for the present, with flinging a stone through the Ropers’ window, and taking to his heels.

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