そうしているあいだ、その手足の不自由な子どもが仔細に調べているのは、親しみのある物語の、慣れ親しんだ名文だった。みすぼらしいページのうち幾ページかは、たとえ失われたとしても、ただ諳んじるだけで、差し替えることができたかもしれなかった。その幾ページに語られている話とは、巡礼者の歩みについての話であり、スーザン・ホープレイの話であり、スコットランドの長の話でもあった。祖父の小さな本棚に並ぶ十二冊から十五冊の本は、すべて擦り切れた状態であった。そういうわけで今はもう、旧知のあいだであるせいで、その子どもは大いに物語を愉しみ、しばしば休みながら読み続けた。休んだときにおしよせてくるのはコデマリの香りであり、森にただよう幻想であった。牧夫がならすガチャガチャという音は、騎士の甲冑がたてるガチッという音になった。離れたところからドーンと響いてくるウォルサム大修道院の礼砲が物語るのは、魔法にかけられた城の崩壊だった。そして群れからはぐれた牛がふとあげる嘆きに、彼女は森の人食い鬼のうなりを聞いた。
Meantime the little cripple conned again the familiar periods of the old romance. Few, indeed, of its ragged leaves but might have been replaced, if lost, from pure memory; few, indeed, for that matter, of The Pilgrim’s Progress or of Susan Hopley, or of The Scottish Chiefs: worn volumes all, in her grandfather’s little shelf of a dozen or fifteen books. So that now, because of old acquaintance, the tale was best enjoyed with many pauses; pauses filled with the smell of the meadowsweet, and with the fantasy that abode in the woods. For the jangle of a herd-bell was the clank of a knight’s armour, the distant boom of a great gun at Waltham Abbey told of the downfall of enchanted castles, and in the sudden plaint of an errant cow she heard the growling of an ogre in the forest.