アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」1章13回

 ブストン氏は長身で、なかなか立派な風貌の持ち主で、歳は四十くらい、その髪と髭はなみうっていた。そしてそれから老人にむかって挨拶をしたが、慇懃無礼ではあったが、どこか不機嫌であった。

「ブストンさんは」アイザックおじさんは話しながら、手をふった。「蒸気船関係の仕事につかれている紳士で、おまけに家柄も、趣味もすばらしい方だ。ブストンさんといっしょに休日を過ごすきっかけになったのは、選ばれた者たちのパーティなんだ。藪のなかの宴という名のパーティだよ」

「ああ、あれか」老メイは答えると、鞄をおろした。「ダン・カウのあたりで、そうした集まりを見かけたよ。とても陽気に騒いでおった。手風琴をひいたり、キスごっこをしたり、とても浮かれておった」

「やめてくれ、とんでもない」名士のブストン氏はうなり声をあげた。「あんな低俗な連中の集まりとは違う。あれは馬車にのった行商人の集まりじゃないか」彼は、アイザックおじさんを啓蒙すべく言い添えた。「わたしは、あんな卑しい連中とはちがう。ぜったいに違う」彼は憤怒にかられながら、葉巻の端をくわえたが、火は消えていた。どこかに放り投げようとしたのだが、それも空しく、ついにはティーカップのなかに火の消えた葉巻をおとすことになった。

 

Mr. Butson was a tall, rather handsome man of forty or thereabout, with curly hair and whiskers, and he greeted the old man with grum condescension.

“Mr. Butson,” Uncle Isaac continued, with a wave of the hand, “is a gentleman at present in connection with the steamboat profession, though above it by fam’ly and inclination. Mr. Butson an’ me ‘as bin takin’ a day’s ‘olludy with a seleck party by name of beanfeast, in brakes.”

“O yes,” responded old May, divesting himself of his bag; “we passed some of ‘em by the Dun Cow, an’ very merry they was, too, with concertinas, an’ kiss-in-the-ring, an’ what not—very gay.”

“O damn, no,” growled the distinguished Butson. “Not that low lot. He means that coster crowd in vans,” he added, for Uncle Isaac’s enlightenment. “I ain’t fell as low as that. Lor, no.” He sucked savagely at the butt of his cigar, found it extinct, looked vainly for somewhere to fling it, and at last dropped it into a teacup.

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