アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」5章54回

Ⅴ章

  メイの奥さんは小屋の入り口にまだ立っていた。管理人は明かりで合図をしながら、少し離れたところから呼びかけた。「戻ってきたよ、ミセス・メイ」彼はできるだけ明るくいった。「おじいちゃんは大丈夫だ。ただ、ちょっとした事故にあったみたいだ。でも、それだけだ。そういうわけで、おじいちゃんを運んできた。おどろかないように。水を少しもってきてくれ。おじいちゃんは頭にすこし切り傷ができているみたいだ。だが、うろたえるほどのものではない」そう言いながら、ボブは老人を中に運びいれた。

 ミセス・メイが目にしたのは、青ざめきった顔と血だった。「ああ、なんてひどい」彼女は声をふるわせながら言った。その顔からはすっかり血の気がひいていた。「おじいちゃんが・・・おじいちゃんが・・・」

 「いけない、落ち着いて。しっかりして手伝うんだ。テーブルを動かしてくれ。そうしたら敷物の上におじいちゃんをおろすから」

 彼女は自制して、それ以上はなにも言わなかった。老人のたわごとは不明瞭なつぶやきにかわっていた。床におろされるとすぐに、なぜか立ち上がろうとした。まるで歩き続けようとするかのようだった。だが先ほどよりも、その動きは弱々しくなっていた。ボブ・スモールピースはそっと相手をおさえこみ、繕ったばかりの外套を折りたたんで枕にしたものの上におろした。

MRS. MAY still stood at the cottage door, and the keeper, warned by the light, called from a little distance. “Here we are, Mrs. May,” he said, as cheerfully as might be. “He’s all right—just had a little accident, that’s all. So I’m carryin’ him. Don’t be frightened; get a little water—I think he’s got a bit of a cut on the head. But it’s nothing to fluster about.”…And so assuring and protesting, Bob brought the old man in.

The woman saw the staring grey face and the blood. “O-o-o—my God!” she quavered, stricken sick and pale. “He’s—he’s—”

“No, no. No, no! Keep steady and help. Shift the table, an’ I’ll put him down on the rug.”

She mastered herself, and said no more. The old man, whose babble had sunk to an indistinct mutter, was no sooner laid on the floor than he made a vague effort to rise, as though to continue on his way. But he was feebler than before, and Bob Smallpiece pressed him gently back upon the new-mended coat, doubled to make a pillow.

 

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