アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」26章224回

 舟は潮にのりながら旋回した。明かりは最初の場所にもどり、船首は開いた水門のほうをむいた。水夫のはやし歌が、その行く先にむかって悲しげに響いた。

 

「その男をたおせ。暴れん坊。その男をたおせ。

 それいけ。それいけ。その男をたおせ。

 シンガポールの港がロンドンの街に金をはらってくれる。

 やれやれ、その男をたおす時間をくれ」

 

 タグボートが桟橋にむかうと、舟はそのあとをゆっくりと進み、闇のむこうの雄々しい影を追いかけた。

 すぐに潮は淀み、やがて潮はひきはじめた。さらに深い沈黙がたちこめ、しばらくのあいだ、暗い渦が霧のなかにただよった。それから水と空がひとつになった。空気がふるえ、冷えてきた。星は輝きをましていき、海のほうへと、テムズは行き交う舟をおしながしていった。

 

The ship swung round on the tide, bringing her lights square and her stem for the opening lock. The chanty went wailing to its end:—

 

“Blow the man down, bully, blow the man down— To my Aye! Aye! Blow the man down! Singapore Harbour to gay London town— O give us some time to blow the man down!”

 

The tug headed for the dock and the ship went in her wake with slow state, a gallant shadow amid the blue.

Soon the tide stood, and stood, and then began its ebb. For a space there was a deeper stillness as the dim wharves hung in mid-mist, and water and sky were one. Then the air stirred and chilled, stars grew sharper, and the Thames turned its traffic seaward.

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