数日後の夜、ふたたび彼女に会った。彼女が泣いていたのは一目瞭然だった。ひとけのない通りを歩き、閉ざされた波止場につくと、彼は彼女に涙のわけをたずねた。
「ただ、ただ考え事をしていただけよ」彼女はいった。
「何について?」
「あなたのことよ、ジョニー。あなたとわたしのことを考えていたの。わたしたち、まだ若いわ。そうよね」
彼にすれば、それは困難な問題ではなかった。「そうだね」彼はいった。「そこに問題があるだろうか。たしかに若いけど。他のみんなもそうだよ。でも、ぼくは二年半もすれば、見習い期間は終わる。いや、もっと早いかもしれない。そしたら、そのときは―」
「そうね、そのときは」彼女はその言葉をとらえて言った。「おそらく、そのときは違ってくるでしょうよ。つまり、もう少し大人になって、もう少し分別というものを知るようになるわ、ジョニー。今はしょっちゅう会って、友達のように話をしている。けれど―」彼の目を読みとろうと、彼女は顔をあげて震えた。
冷たい塊のようなものが、喉にこみあげてきたので、ジョニーは自分の声をたしかめた。「それで、君はどうしたいというつもりなのか? まさか」
「そういうことなの」彼女はいったが、それはかなりの困難をともなった。「そうするのが一番いいのよ、きっと、ジョニー」
ジョニーは息をのんでから、しぼりだすように声をだした。「なんてことだ」彼は言った。「もし、ぼくを放りだしたいなら、はっきりとした英語で、そう言えばいい」
「お願いだから、そんな言い方はやめて、ジョニー」彼女は懇願すると、手を彼の腕においた。「意地悪よ。意地悪だってわかるでしょ?」
「そんなことない。わかりやすく正直に言っただけだ。この中途半端な関係のどこに問題があるのかわからない。友達として会って、それでおしまいじゃないか」
A few nights later he saw her again. Plainly she had been crying. When they came to a deserted street of shut-up wharves he asked her why.
“Only—only I’ve been thinking!” she said.
“What about?”
“About you, Johnny—about you and me. We—I think—we’re very young, aren’t we?”
That had not struck him as a difficulty. “Well,” he said, “I don’t know about that. I s’pose we are, like others. But I shall be out o’ my time in two years and a half, or not much more, and then—”
“Yes, then,” she said, catching at the word, “p’raps then it will be different—and—I mean we shall be older and know better, Johnny. And—now—we can often see one another and talk like friends—and—” She looked up to read his eyes, trembling.
Something cold took Johnny by the throat, and checked his voice. “But—what—you don’t mean—that?”
“Yes,” she said, though it was bitter hard. “It’ll be best—I’m sure, Johnny!”
Johnny gulped, and his voice hardened. “Oh!” he said, “if you want to throw me over you might say so, in straight English!”
“Oh—don’t talk like that, Johnny!” she pleaded, and laid her hand on his arm. “It’s unkind! You know it’s unkind!”
“No—it’s only plain an’ honest. I don’t understand this half-and-half business—seeing each other ‘like friends’ an’ all that.”