チェスタトン「マンアライヴ」一部五章第138回

「紳士淑女の皆さん」ウォーナー医師は毅然として言った。「このご婦人に脇にどいていただくように、なんとしてもお願いしなくてはなりません。ご覧のとおり、私たちは難しい状況にたたされるのです。一台の馬車に、この三人で乗るのですから」

「まあ、私とスミスがお願いした馬車なんですよ」メアリーは言い張った。「馬車の上には、イノセントの黄色い鞄が積んでありますわ」

「脇にどきなさい」ウォーナーはぞんざいな口調で繰り返した。「それに君もだよ、ムーンさん。少しだけ、体を動かしてください。さあ、はやく。この嫌な仕事がはやく終わるほど、いいのだから。君がよりかかったままなら、どうやって門を開ければいい?」

マイケル・ムーンは相手のほっそりとした人さし指を見つめ、この論争を幾度も反芻しているようだった。「わかった」彼はついに言った。「でも門をあけたままだと、どうやって寄りかかっていればいい?」

「どけばいいじゃないか」ウォーナーは機嫌良く、大声でかえした。

「いつでも門にはよりかかれるとも」

「そんなことはない」ムーンは反射的に言った。「よりかかれる時も、場所も、青い門も滅多にない。それもすべて、旧家の出かどうかにかかっている。僕のご先祖様は門に寄りかかっていたんだ。誰かが門の開け方を発見する前から」

「マイケル」アーサー・イングルウッドは、ある種の憂鬱さをこめて叫んだ。「脇にどいてくれるかい?」

「なぜ? いやだ。どくつもりはない」マイケルはしばらく考えたのちに言うと、ゆっくりとふりかえった。すると目にとびこんできたのは話題の主であったが、彼は相変わらずのらりくらりとした様子で、道をふさいでいた。

 

“Ladies and gentlemen,” said Dr. Warner firmly, “I must insist on asking this lady to stand aside. We shall have trouble enough as it is, with the three of us in a cab.”

“But it IS our cab,” persisted Mary. “Why, there’s Innocent’s yellow bag on the top of it.”

“Stand aside,” repeated Warner roughly. “And you, Mr. Moon, please be so obliging as to move a moment. Come, come! the sooner this ugly business is over the better—and how can we open the gate if you will keep leaning on it?”

Michael Moon looked at his long lean forefinger, and seemed to consider and reconsider this argument. “Yes,” he said at last; “but how can I lean on this gate if you keep on opening it?”

“Oh, get out of the way!” cried Warner, almost good-humouredly.
“You can lean on the gate any time.”

“No,” said Moon reflectively. “Seldom the time and the place and the blue gate altogether; and it all depends whether you come of an old country family. My ancestors leaned on gates before any one had discovered how to open them.”

“Michael!” cried Arthur Inglewood in a kind of agony, “are you going to get out of the way?”

“Why, no; I think not,” said Michael, after some meditation, and swung himself slowly round, so that he confronted the company, while still, in a lounging attitude, occupying the path.

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