チェスタトン「マンアライヴ」二部一章第177回

こうして堅固に築かれた裁判所をまえにして、サイラス・ピム博士は、両耳にかかる蜂蜜色の髪をかきあげると、事件の弁論を開始した。彼の陳述は明瞭であり、抑制されてもいた。その陳述では比喩表現がほとばしるように語られ、人々の注意をひいたが、それは言いあらわし難いほどの不愛想さのせいであって、アメリカ人の演説に非凡さがあるせいではなかった。

彼は華奢な指すべての指先をマホガニーのうえにたてると、目をつむり、口をひらいた。「そういう時代ではなくなったのだ」彼は言った。「殺人が道徳にからむものであり、個人的なものだと見なされる時代ではなくなった。おそらく殺人者にとっても大事なことだし、殺される側にとっても大事なことだろう。科学は深いところまで…」

 

It was before this solidly-established tribunal that Dr. Cyrus Pym, after passing a hand through the honey-coloured hair over each ear, rose to open the case. His statement was clear and even restrained, and such flights of imagery as occurred in it only attracted attention by a certain indescribable abruptness, not uncommon in the flowers of American speech.

He planted the points of his ten frail fingers on the mahogany, closed his eyes, and opened his mouth. “The time has gone by,” he said, “when murder could be regarded as a moral and individual act, important perhaps to the murderer, perhaps to the murdered. Science has profoundly…”

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