チェスタトン「マンアライヴ」二部一章第213回

「しばらく話は途切れたが、それは初めてのことではなかった。この気の滅入るような会話は何時間も続き、皮肉をあびせたり、沈黙したりということが繰り返されていたからだ。イームズは話し続けたけれど、その明敏な才気も疲弊しているようにみえた。『正しくない推測について疑念をはさみたいということを望むだけである。蛾は蝋燭に飛び込んでしまう。なぜなら、蛾は蝋燭にそうして戯れることが、生死をかけるほどのものでないと知らないからだ。スズメバチがジャムに飛び込んでしまうのは、ジャムを取り込もうと望んだ挙句の、嬉々としたふるまいだからだ。同じようにして教養のない人々は人生を楽しむが、それはジンを楽しみたいからだ。あまりにも愚かしい人々だから、ジンに高い代価を払っていることがわからない。人々は幸せを見つけられないし、幸せの探し方もわからないでいる。人々のとる行動すべてが、目もくらむほど醜悪であることから、それは証明される。人々の調和のとれていない姿は、苦痛の叫びである。大学をこえ、川沿いにあるレンガの家々を見てごらん。シミのついたブラインドがかかっている家がある。見てごらん。さあ、見てごきてらん』

 

“After a patch of pause, not the first—for this depressing conversation had gone on for some hours with alternations of cynicism and silence— the Warden continued with his air of weary brilliancy: `It’s all a question of wrong calculation. The moth flies into the candle because he doesn’t happen to know that the game is not worth the candle. The wasp gets into the jam in hearty and hopeful efforts to get the jam into him. IN the same way the vulgar people want to enjoy life just as they want to enjoy gin—because they are too stupid to see that they are paying too big a price for it. That they never find happiness—that they don’t even know how to look for it—is proved by the paralyzing clumsiness and ugliness of everything they do. Their discordant colours are cries of pain. Look at the brick villas beyond the college on this side of the river. There’s one with spotted blinds; look at it! just go and look at it!’

 

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