「私の中の三島由紀夫」
著者:山本光伸
出版社:柏艪社
ISBN:978-4-434-230981 c0095
作者はのっけから「非才の私に三島由紀夫が論じられるわけがないではないか。三島の作品だって全て読んではいないし、熱心で誠実な読者であったわけでもない。」と謙遜して言うけれど。
でも二十代の頃、楯の会に身をおいた作者だからこそ記憶にとどめた三島の言葉の数々が新鮮だ。
「老後は純粋ミステリーを書いてみたい、そして畳の上で死にたいものだ」(ラジオで)
「そうだよ、おれは太宰治と同じだ。同じなんだよ」(村松剛に)
「青春に於て得たものこそ終生の宝」(楯の会会員宛遺書)
三島も、穏やかな老後をちらりとでも思うことがあったのか。
それに三島は太宰が嫌いだったと思い込んでいたのに。この本のおかげで、あらたな三島のイメージを次々と発見。
また切腹する直前、三島が叫んだ「森田、お前はやめろ!」の森田を、「豊饒の海」の「奔馬」の飯沼勲と重ねる山本氏の読み方もユニーク。
北杜夫「白きたおやかな峰」についての三島の評文「行為に対する、言葉の側からの憑依力が欠けている」という一節を読んで、三島の文学評論も読みたくなった…。
こうして脱線読書道の日々が明日も続く。
読了日:2017年7月1日