チェスタトン「マンアライヴ」二部一章第231回

「ああ、そんなことを言わないでください!」スミスは洞察力をはたらかせて言ったが、それは心の痛みをともなうものであった。「そんなことを言わないでください。僕が混同していて、生の喜びと生きる意志を取り違えているなんて。それではドイツ語じゃないですか。しかもドイツ語のなかでも、それでは高地オランダ語ですよ。高地オランダ語ではさっぱり分からないじゃないですか。先生が橋にぶらさがっていたとき、先生の目には輝く光がありましたが、それは生命の喜びであり、「生きようとする意志」ではありませんでした。先生があの忌まわしいガーゴイルにまたがって知ったのは、あらゆることが言われたり、なされたりしたときには、世界は素晴らしくも、美しい場所だということなのです。僕にはわかります。あの瞬間にわかったのです。灰色の雲が桜色にそまるときに。家々のあいだの隙間にある金メッキをほどこされた時計を見たときに。こうしたことからなんですよ。先生が離れるのを嫌がったのは。人生から離れるのを嫌がったのではないのです。それが何であれ、イームズ、僕たちは死の淵まで共に行ったのです。正しいことを認めますか?」

“`Oh, don’t tell me that!’ cried Smith with the sudden clairvoyance of mental pain; `don’t tell me I confuse enjoyment of existence with the Will to Live! That’s German, and German is High Dutch, and High Dutch is Double Dutch. The thing I saw shining in your eyes when you dangled on that bridge was enjoyment of life and not “the Will to Live.” What you knew when you sat on that damned gargoyle was that the world, when all is said and done, is a wonderful and beautiful place; I know it, because I knew it at the same minute. I saw the gray clouds turn pink, and the little gilt clock in the crack between the houses. It was THOSE things you hated leaving, not Life, whatever that is. Eames, we’ve been to the brink of death together; won’t you admit I’m right?’

 

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