2017.9隙間読書 坂口安吾「復員殺人事件」

「復員殺人事件」

作者:坂口安居

青空文庫

11月26日開催予定の日比谷日本ミステリ読書会、次回の課題本である。

「不連続殺人事件」につづく坂口安吾の長編ミステリ。掲載雑誌が廃刊になってしまい、解決編はしめされず、犯人はわからないままの未完ミステリ…ということで疑問だらけのまま読了。

まず殺人の動機は何なんだろうか。資産が目的なら、倉田家当主の倉田由之を殺してしまえばいいのに。子供たちは殺されても、由之はしぶとく生きている。

子供たちが長男公一とその子供、次男安彦、三男定男、長女起久子とバタバタ殺されていくのに、倉田家当主の由之がまったく悲しんでいる気配がないのはなぜか?

財産がらみだとしたら一番得をするのは誰だろう? 長男公一の妻であり、倉田家当主由之の妾である由子か、それとも由之の次女美津子だろうか。

安彦が出征前夜に、自分が戦死したらあけるようにと残した包みに記された「マルコ伝第八章二四」のメッセージとは? 「人を見る、それは樹のごときものの歩くが見ゆ」という文句が残したかったのだろうか。まさか後ろから読んで「しにんがはち」、「死人が八人でるぞ」だったりして?死にかけた人物はちょうど八人だと思うけど。

「不連続殺人事件」を読んだとき、安吾は、犯人を詳細に描く作家だという印象をうけた。「復員殺人事件」で一番多く描写されているのは安彦、次が由之なのだが(青空文庫は、こういうことを調べるのにとても便利。筑摩文庫版はあるけれど)。もし犯人が安彦だとしたら、なぜ犯行を、どのようにして…依然、疑問につつまれたままである。

異国の地で邪教に入信した重吉の役割とは?まだまだ疑問だらけである。安吾にかわって高木彬光が解決編をしるした「樹のごときもの歩く」を楽しみに読むことにしよう。

読了日:2017年9月22日

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