チェスタトン「マンアライヴ」二部三章第286回

「被告人からなにも受け取っていない」ムーンは落ち着いて答えた。「弁護側がしめしたわずかな文書の出どころは別方面からだ」

「どちらからなのか?」ピム博士は訊ねた。

「どうしても教えてほしいということなら」ムーンは答えた。「あの文書はミス・グレイから入手した」

サイラス・ピム博士は目をつぶるのも忘れてしまい、そのかわりに目を大きく見開いた。

「それはつまり」彼は言った。「ミス・グレイが、前スミス夫人について証言する文書をもっていたということなのか?」

「まさにそのとおり」イングルウッドは言うと、腰をおろした。

 ピム博士は、声をおとして痛ましそうに思い込みについて一言二言語り、そして明らかに困難な様子を見せながら開会の挨拶を続けた。

「不幸にも、悲劇的な真実がパーシー牧師補の話から明らかになった。その真実を確信させたものとは、他の、衝撃的な文書だった。しかも私たちが持っている文書だった。これらの文書のなかでも、重要で、もっとも確かなのはイノセント・スミスの庭師によるものだ。その庭師はスミスをよく見かけたが、彼のふるまいの大半は、夫婦の不誠実といった類の、芝居にでてきそうな、目をみはってしまうものだったらしい。グールドさん、庭師を紹介してください」

“We have had nothing direct from the prisoner,” said Moon quietly. “The few documents which the defence guarantees came to us from another quarter.”

“From what quarter?” asked Dr. Pym.

“If you insist,” answered Moon, “we had them from Miss Gray.

“Dr. Cyrus Pym quite forgot to close his eyes, and, instead, opened them very wide.

“Do you really mean to say,” he said, “that Miss Gray was in possession of this document testifying to a previous Mrs. Smith?”

“Quite so,” said Inglewood, and sat down.

The doctor said something about infatuation in a low and painful voice, and then with visible difficulty continued his opening remarks.

“Unfortunately the tragic truth revealed by Curate Percy’s narrative is only too crushingly confirmed by other and shocking documents in our own possession. Of these the principal and most certain is the testimony of Innocent Smith’s gardener, who was present at the most dramatic and eye-opening of his many acts of marital infidelity. Mr. Gould, the gardener, please.”

 

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