初出:1990年
東京創元社
殺人も、財産騒動も何も出てこないけれど、人の心の意外さを解き明かしてアッと驚かす北村作品、私にはとても楽しいミステリである。
「朧夜の底」で語られた赤いドレスを着て可愛い姉、同じ服を着てもなぜか可愛く思えない私のエピソード。それに「夜の蝉」の赤のスリッパ、ピンク色のスリッパをめぐる姉妹の争いも絡んで、この姉妹の葛藤も大事な伏線になっている。
こんな心の錯覚を見せてくれるミステリもいいなとおもう。
主人公「私」の名前は出てこなかったと思うが。シリーズの最後まで名前は分からないままなのだろうか?なぜ主人公の名前を空白にしたのだろう…その意図も知りたい。
読了日:2018年2月14日