作者:田中貢太郎
文豪山怪奇譚収録
冒頭の「紫色に光る山蚯蚓」はどんな生き物だか知らないが、なんとも気味悪く、じっとりとした山の湿度が伝わってくる。山蚯蚓が蛙にのみこまれ、その蛙も…
蛇は蛙の傍へ往くとと鎌首をあげて、赤い針のような舌をちらちらと二度出した後に蛙の隻足(かたあし)をくわえた。蛙は驚いて逃げようとしたがどうしても逃げることができないで、その体は次第に蛇の口の中へ消えて往った。
不気味さが反復されるような描写は山蚯蚓、蛙、蛇のあとも繰り返され、今度は不気味な老僧が現れる。
老僧は斬りつけられるたびに分身となり増えていく。今度は人か…と怖くなると同時に、最後はどうなるのだろうと怖いやら、期待するやら。最後のうなされていた悪夢から覚醒するような終わり方も余韻に浸れてよかった。
読了日:2018年5月6日