チェスタトン「マンアライヴ」二部三章第311回

「君のおかげでわかったよ」彼はやはり夢見るような目で言った。「男が自分の妻から逃げ去ることが、なぜよこしまなことなのか。そしてなぜ危険なことなのか」

「では、なぜ危険だと言うのですか?」私は訊ねました。

「なぜかって。だれからも見つけられることがないからだよ」この奇妙な男は答えました。「でも、僕たちは見つけられたいと思っているんだ」

「思想家のなかでも独創的な人たちは」私は指摘しました。「イプセン、ゴーリキ、ニーチェ、ショーが皆言っていることですが、私たちが最も望んでいるのは見失われることなのです。踏み跡のない道を進み、前例のないことをすることなのです。そうするうちに過去を打破し、未来へとつながっていくことでしょう」

“`You have convinced me,’ he said with the same dreamy eye, `why it is really wicked and dangerous for a man to run away from his wife.’

“`And why is it dangerous?’ I inquired.

“`Why, because nobody can find him,’ answered this odd person, `and we all want to be found.’

“`The most original modern thinkers,’ I remarked, `Ibsen, Gorki, Nietzsche, Shaw, would all rather say that what we want most is to be lost: to find ourselves in untrodden paths, and to do unprecedented things: to break with the past and belong to the future.’

さりはま の紹介

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: チェスタトンの部屋, マンアライヴ パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.