さりはま書房徒然日誌2023年7月10日旧暦5月23日

伊藤裕作「寺山修司 母の歌、斧の歌、そして父の歌 鑑賞の試み」をPASSAGEに搬入

編著者の伊藤裕作さんをはじめとして、寺山修司をこよなく愛する六人が寺山短歌の魅力を語った本「寺山修司 母の歌、斧の歌、そして父の歌 鑑賞の試み」をPASSAGE書店さりはま書房の棚に搬入してきた。

「寺山修司は一筋縄では行かない。だから六人がかりで」との言葉がこの本のどこかにあった。

たしかにそれぞれの人生にもとづいた解釈の火花が飛び散っていて、あらためて寺山修司という世界の深みを思う。

最後、「跋文にかえて」で伊藤さんは寺山修司のこの言葉を引用する。

「100年たったら帰っておいで、百年たてばその意味わかる」

寺山修司の歌を読むということは、万華鏡を覗くようでもあり、天体望遠鏡ではるか彼方の星を探すようでもあり……なのかもしれない。

そんな寺山ワールドに魅せられた六人の言葉に耳を傾けてみませんか?

それにしても表紙の寺山修司、なんともいい表情をしていますね。

PASSAGEにて購入した小豆洗はじめ「季節の階調 夏」を読む

詩人・小豆洗はじめさんは神保町PASSAGEの棚主さん。自分でつくられた詩集や詩関係の本を扱われている。今日、購入した「季節の階調 夏」も小豆洗さんが一年前にご自分でつくられた詩集だ。

「季節の階調 夏」には自分で……という手作りの良さ、目配りが随所に感じられる。

途中までインクは心地よい青。

蝉がジジジ……と鳴いて

空を横切っていった

という最初の頁の次に広がるのは青い海の絵。蝉の声と海に暑さも消え、夏の広がりと静けさだけが心に沁みて夏の詩へと誘う。

青いインクで印刷された様々な夏を切り取った詩が続いたあと、

最後に近づいたところで、闇に視力を失う「Mr. Indianとの夜」の詩で文字が黒くなる……ああ、闇だ……と思わせる効果がある。

最後の読経の声と蝉の合唱を記した文も、読経のイメージが文字の黒インクと合っていて素敵だなあと思う。

蝉ではじまって蝉で終わる試みも印象的。同じ蝉なのに夏の詩を読んだ後では心に聞こえてくる声が違う気がする……。不思議

幾何学模様の詩も二箇所ほどだろうか……あいだに挿入されている。かたちと詩句が自然に溶け込んでいる……でもご苦労されたのでは……と思う。

「胡瓜」という詩の例え。初めて聞くけど、胡瓜をかじる感覚はたしかにそんな気がする……と頷いてしまった。

胡瓜をかじったら

夏の空があふれた

種の粒つぶが奥歯ではじけて

蝉の声が止んだ

詩や文だけでなく、インクの色、絵、幾何学模様の詩、蝉の声……を工夫して散りばめた素敵な詩集。さらに小豆洗さんのすごいところは、定期的に発行されているところ。

こうした個人の詩集に出会えるPASSAGEにも感謝。

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