さりはま書房徒然日誌2023年7月25日(火)旧暦6月8日

丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」を読む

屋形船おはぐろとんぼは周囲の自然に思いを寄せる。

丸山先生の目に映る信濃大町の風景にも、山との対話にも思えてくる。

自然を語ると同時に生死を、時を語る雄大さがよいなあと思う。

夏の盛りであっても山嶺に雪をいただく山吹岳を軸とする

晴曇定めなき天候に感情の動きをぴたりと合わせ

朽ち葉にうずもれた墓のなかで魂を放棄する死者たちを

ひとり残らず黙って受け容れ、

時がもたらす善と悪の強固な結合を

胸がすくほどの手際によってすっぱりと断ち切り、

(丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」中417頁)

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