さりはま書房徒然日誌2023年7月26日(水)旧暦6月9日

移り変わる日本語の風景ー花火ー

この時期、花火の予定をこまめにチェックしてから外出しないと、思わぬ人混みに巻き込まれる。

ふだんは改札が一箇所しかないような河辺の寂しい駅。それが花火大会ともなると人があふれ、ホームから改札に出るのも10分以上かかる。完全にキャパシティをオーバーした状態だ。

さて、かくも人を夢中にさせる花火とは……と、日本国語大辞典でその歴史を紐解く。以下、青字部分は日本国語大辞典の説明を抜粋。

花火は鉄砲とともに……。

1543年の鉄砲伝来以降、武器の一種として伝わった。

徳川家康も花火に夢中になった様子。

1613年、徳川家康が、唐人の上げた娯楽用の花火を見物したといい、その頃より花火師が現われた。瓦屋根が少ない江戸の町では火事の元ともなり、町中で打ち上げることに対する禁令が1648年以降度々出された。

「川開き」という言葉は花火に由来している。

場所を水際に限られてからも人気は衰えず、元祿の頃には町人の花火師による茶屋花火、花火船などで賑わった。その時期が旧暦五月二八日から八月二八日に定められたので、その初日を「川開き」と称し、隅田川の両国橋付近で大花火をあげるようになった。この花火の製造元は両国の鍵屋ならびに鍵屋の別家玉屋で、打上げの際に「カギヤ・タマヤ」と声をかけるのはこれによる。以後、第二次大戦中を除き、川の汚染で中止となる1961年まで毎年行なわれ、1978年復活した。

今でこそ「花火」=「夏」「夏休み」のイメージだ。

だが旧暦の時代、八月中旬以降は秋の扱い……なので、季語としては本来「花火」は秋の季語だそう。

現代の季節感覚とはずれがあるので、夏の季語として扱ってもよいらしい。

季語がいつであろうと、次の泉鏡花の俳句は涼やか。鏡花のように花火は遠くにて静かに見るもの……かもしれない。

花火遠く 木隠(こがくれ)の星 見ゆるなり(泉鏡花)

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