仁木悦子「子をとろ 子とろ」を読む
民話調のタイトルも響きがよく、「読んでみたい」と興味をそそられる。
子供を見ると追いかけてくる「子とろ女」の怪談が大切なベースとなっているのも面白い。
怪談に怯える子供たちの様子も生き生きとしている。
だが40ページの短さに登場人物がおそらく15人以上。人物への説明が多くなり、せっかくの怪談風味を打ち消している。こんなに人物説明が必要だろうか?
冒頭部分から母親が、自分の子供を「幼稚園から帰っておやつを食べていた息子の哲彦」とか「哲彦の妹の鈴子」と、読み手に説明するのも白ける思いがする。
最後、犯人の状況について色々説明して犯行動機を納得させようとするところも、何だかわざとらしいし、もう少しそういう雰囲気を書いておいて欲しかったと思う。
タイトルと怪談そのものがよかっただけに残念である。怪談とミステリーの両立は難しいのだろうか?