丸山健二「我ら亡きあとに津波よ来たれ」下巻を少し読む
ー植物への愛情が滲む文は丸山先生ならではー
以下引用箇所は、庭づくり命!で毎日庭仕事をされている丸山先生にしか書けない文だと思った。
丸山塾で指導を受けていると、時々「その風の頃に咲く花は何?」と訊かれて狼狽えることがある。
丸山先生の頭の中には、季節の植物のカレンダーが組み込まれているのでは……とよく思う。
さらに丸山先生の植物カレンダーは信濃大町基準のカレンダーで、東京近郊とはずれがあるようだ。
とにかく植物と庭は丸山先生の人生の中心なのだろう。
「真剣そのものに咲き初める花々と 面白半分に咲き誇る花々」などという表現は、毎日いつも植物のことを見つめている丸山先生にしか書けない文だと思う。
「克服しがたい偏見のなかに見る影絵」という表現もはっきりとは分からないながら美しい文だと思う。
このあたりドッペルゲンガーについても面白い箇所があったが、寒さと雷がゆっくり体を休めるように……と言っているようだ。それはまた後日。
ごつごつした感触の終末の予感が処々方々で生まれかけている被災地に
真剣そのものに咲き初める花々と
面白半分に咲き誇る花々とが
克服しがたい偏見のなかに見る影絵のように
わが脳裏をかすめてゆくなかで
(丸山健二「我ら亡きあとに津波よ来たれ」下巻546頁)