丸山健二「トリカブトの花が咲く頃」
ー巡りが原の言葉に生きることのしんどさを思うー
以下引用部分は高原・巡りが原がおのれを語る箇所。
巡りが原のことでもあり、丸山先生自身のことを語っているようでもあり、人間全般を語っているような箇所だと思った。
「生の存在であることからは そう簡単に脱出できない」という言葉に、生きていることへのしんどい思いも感じられる。
そういえば、いつかオンラインサロンで死後の世界を尋ねられた丸山先生が、たしか「もう一つの世界は物理学的に必ずあると思っている。でも、また生きていくのなら、それはしんどい、勘弁してもらいたい」というようなことを言っていたと思い出す。
夢を抱きやすく夢を放棄しやすい
そのくせいつまでも目を覚まさぬ
自分に都合のよいときだけ強がりを言ってみせる弱者でいっぱいの
いたずらに騒々しい俗世間に近似している
(丸山健二「トリカブトの花が咲く頃」354頁)
けっして放恣な想像力から生まれたわけではなく
現世における空虚な付け足しでもないこの私が
無防備な意識と
果てしない倦怠と
望んでも得られぬ定めをさずかった
生の存在であることからは
そう簡単に脱出できない
(丸山健二「トリカブトの花が咲く頃」355頁)