丸山健二「風死す」1を少し再読する
ー最後の「風死す」に至るまでの間に風も変化している!ー
詩人にして犯罪者、末期癌患者の20代青年が主人公の「風死す」。
ストーリーがないようでいながら、最後「風死す」に至るまでの間に風もじわじわ変化している……と、以下引用箇所に思う。
最初は「最小のつむじ風」とか「ケチな規模の旋風」であったことに、再読で気がつく。
ストーリーが進むにつれて風も変化してゆくのだ。
今度は、風の移り変わりにも注意しながら読んでいってみよう。
やくざな根なし草の典型として 旅烏や流れ者や風来坊と称され
重苦しい立場に纏わる胸のうちを 最小のつむじ風が渦巻き
(丸山健二「風死す」25頁)
さらに しばらくの後 そのケチな規模の旋風は 薄っぺらなおぼろ雲に似て掻き消え
(丸山健二「風死す」25頁)
以下引用箇所、主人公の選択に迷う気持ちを表現している。二十代の青年が迷うのに相応しい、格好いい表現だなあと思う。
蒼穹を仰ぎ見るか小流を渡るかのいずれかで
(丸山健二「風死す」27頁)
ストーリーがないようでいながら、底に流れる丸山先生の思いはやはり変わらず……と以下引用箇所に思った。
高額な報酬やまずまずの出世をすっかり諦めた官僚よろしく
組織からの解放が至上の喜悦であることを再確認した後
(丸山健二「風死す」27頁)