丸山健二「風死す」1巻を少し再読する
ー言葉がつないでゆくイメージの美しさよ!ー
1巻396ページ「唄え!」の前2ページに配置された菱形部分は、片側が死について、片側が生と格闘する主人公についてイメージを喚起するように書かれている。
引用箇所について。
まず死が聴覚的、絵画的に語られた後、犯罪者である主人公と重なる悪のイメージへと展開してゆく。
「個体の終末」「雨音にかき消され」「悪事は狂的な信仰」「古びた港まで曳航される老朽船」この言葉による連想の仕方が、意識下に深い映像を送り込むようで面白い……というか、この送られてくる映像がすごく気に入った。
「古びた港」から「掃き溜め」と、飛躍しているようで「水っぽくてゴタゴタしている」というイメージがつながり、無数の生の泡が見えてくる気がする。
それから生の没義道ぶりを語って、次のページの犯罪者の主人公へと繋げていっているのではないだろうか?
そんなふうに言葉の連想ゲームで脳内に不思議な絵画が描かれるひとときを楽しんだ。
死
は個体
の終末とい
う声が雨音にか
きけされてゆく 悪
事は狂的な信仰 さもな
ければ 古びた港まで曳航さ
れる老朽船 ともあれ 掃き溜め
に棄てるほどある生命は 法
に即しての行為をけっし
て求めず 自由に敵
対するものとし
て排除した
がるの
だ
(丸山健二「風死す」1巻