丸山健二「千日の瑠璃 終結1」を少し読む
ー天空から降ってくるような言葉ー
十二月十七日は「私は羽毛だ」で始まる。空中でハヤブサに捕獲されバラバラになって散らばったツグミの羽毛が語る。
以下引用文。与一はそっと羽毛をつまみあげる。そのとき「双方が同時に打算的な錯覚に」陥る。
その錯覚の美しさ、羽をまとえば飛べるだろうという錯覚にかられて羽を拾い集め自分のセーターに刺す世一の純な心が印象的。
「熱き肉体」「翼の元」という言葉に、この世のものではない世界を感じてしまう。
私は少年から熱き肉体を借り受け
少年は私から翼の元を譲り受けようとし、
つまり
少年は数十本にも及ぶ私を丹念に拾い集めて
それを青いセーターに丁寧に突き刺し、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」312ページ)
以下引用文。「夢を飛ばすことがあたわず」「魂すら羽ばたかせられず」「心はすでにして大空に在り」という言葉にも、天空から語りかけてくるような、自由な視点を感じる。
結局私は少年の夢を飛ばすことがあたわず
魂すら羽ばたかせられず、
とはいえ
当人自身はまったく意に介しておらず
心はすでにして大空に在り、
(丸山健二「千日も瑠璃 終結1」313ページ)