丸山健二「千日の瑠璃 終結1」を少し読む
ー飾りを虚しく思う心が丸山作品らしいー
十二月十八日は「私はクリスマスツリーだ」で始まる。
「まほろ町のうらぶれた商店街の真ん中にでんと据えられた」クリスマスツリーに憧れるのではなく、むしろその虚さを語ってゆく視点が、丸山先生らしい。
以下引用文。盲目の少女は父親が抱き抱えて、クリスマスツリーに触れさせても何の興味も示さない。
少女が待ち焦がれるもの……に、装飾よりも大事なものとは……と語りかけてくる丸山先生の視点を感じる。
ところが
少女の心は何やら別の思いで塞がっているらしく
人工的な虚飾など入りこめる余地がまったくない。
そんな彼女がひしと抱きしめたのは
結局のところ私などではなく
あとから遅れてやってきた黄色い老犬で、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」316ページ
以下引用文。クリスマスツリーを見て、世一がとったまさかの行動。
クリスマスツリーの言葉に、飾りという存在の虚しさを感じる。
その虚ろな響きのなかで
自分には与えてやれるものが何もないことを
つくづくと思い知らされるばかりだ。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」317ページ)