丸山健二「千日の瑠璃 終結1」を少し読む
ーイメージを排除することでオオルリの青が鮮やかになるー
十二月二十六日は「私は青だ」で始まる。
以下引用文。きっぱりと「青」とだけ言い切って、他のイメージは一切否定する潔さが、青のイメージを際立たせる。そうして凝縮した「青」が、世一の視点で「瑠璃色」「オオルリの羽の色」と変化して、読んでいる者も世一の心をいつしか楽しんでいる。
水色でも空色でもなく
悲しみの色でもない、
青いから青としか言いようがない
青の世界に確然と存在する
紛うことなき青だ。
しかし少年世一は
そんな私のことを瑠璃色と決めつけ
オオルリの羽の色そっくりだと信じきっていて、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」346ページ)
以下引用文。世一は「青」のセーターを編み始めた姉に、もう一色入れるようにせがむ。ここでも「雪の白でも 死の白でもない」とイメージを否定することで、世一が見つめる白が読む者の心に再生される気がする。
そして
オオルリの腹部を占めている白を、
雪の白でも
死の白でもない、
ひとえに私に添えて
引き立たせるための白を
色見本として見せ、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」347ページ)